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大腸ポリープは小さくても危険?形状と種類でわかる“がん化しやすいタイプ”を専門医が徹底解説

[2025.11.24]

大腸ポリープは小さくても危険?

 

 

形状と種類でわかる「がん化しやすいタイプ」を専門医が解説

 

「大腸ポリープがあります」と言われると、
「それってがんですか?」「小さいから大丈夫ですよね?」
と不安になる方が少なくありません。

大腸ポリープとは、大腸の粘膜がいぼのように盛り上がった“できもの”の総称で、
良性も悪性も含む名称です。

大腸がんの多くは、最初から「いきなりがん」として現れるのではなく、
良性ポリープ(腺腫)から少しずつ悪性化してがんになると考えられています。
そのため、

「ポリープの段階で見つけて切除する=大腸がんを予防する最も確実な方法」

と言っても過言ではありません。

 

ただし、ポリープの“危険度”は**大きさだけでなく、形状(形)や組織型(種類)**によっても大きく変わります。

この記事では、

  • 大きさから見たがん化リスク

  • 形状から見た「危険なタイプ」

  • 組織型(腺腫・鋸歯状病変など)から見た要注意ポリープ

  • 見つかったときの治療・フォローアップの考え方

を、医学的な根拠に基づいて分かりやすく解説します。

 

1. 大腸ポリープの「大きさ」とがん化リスク

 

一般的に、大腸ポリープにがんが含まれる確率(担癌率・悪性率)は
サイズが大きくなるほど高くなります。

 

サイズ別の担癌率と切除の目安

 

ポリープの大きさ 担癌率・悪性率の目安 対応の目安
5mm以下(微小病変) 担癌率 0.03〜0.5%程度(報告により差あり)、日本では約1%超との報告も 経過観察も容認されるが、切除を弱く推奨
6mm以上 がんを含む頻度が明らかに増加 内視鏡切除を推奨
10mm以上 がん合併率 約28%前後、悪性率は約4割まで上昇 原則として積極的切除
20mm以上 悪性率 約7割前後、腺腫の担癌率20〜30%以上 多くは内視鏡的切除または外科手術を要する

 

微小ポリープ(5mm以下)は取るべきか?

 

日常の大腸内視鏡で見つかるポリープの70〜80%は5mm以下の微小病変です。
このサイズでがんが含まれる確率は低いものの、

  • 将来少しずつ大きくなって、

  • 数年後にがん化していく可能性

を考えると、最近のガイドラインでは、

「大きさにかかわらず、原則として内視鏡で切除することを弱く推奨」

という考え方が主流になっています。

 

2. 形状でわかる「がん化しやすい大腸ポリープ」

 

ポリープの“形”は、
単に「丸い・平たい」という見た目の違いだけでなく、がん化リスクに直結する重要な情報です。

大きくは以下のように分けられます。

  • 隆起型(いわゆる「イボ状」に盛り上がっている)

  • 表面型(平坦・やや盛り上がる)

  • 陥凹型(表面がへこんでいる)

この中で、特に**「小さくても危険」なのが陥凹型・一部の表面型**です。

 

2-1. 最も危険な形状のひとつ:陥凹型(0-IIc)

 

陥凹型腫瘍(0-IIc)は、表面がわずかにくぼんで見えるタイプの病変です。
早期大腸がんでよく見られる形で、「小さくても危険」な代表格
です。

  • 数mmの小ささでも早期がんである可能性が高い

  • 良性ポリープを経ず、正常粘膜から直接「de novo癌」として発生しうる

  • そのため、進行スピードが速いタイプのがんが含まれることがある

  • 小さい段階でもリンパ節転移を起こすリスクが報告されている

 

内視鏡ガイドラインでも、

「平坦・陥凹型腫瘍は、5mm以下の病変でも内視鏡切除を強く推奨」

とされており、「小さいから様子を見ましょう」とは言いにくい形状です。

 

2-2. 横に広がるタイプ:側方発育型腫瘍(LST)

 

側方発育型腫瘍(Laterally Spreading Tumor:LST)は、
“おせんべいのように横に広がる”腫瘍で、盛り上がりは低いが面積が広い
のが特徴です。

  • 径10mm以上の平坦〜低い隆起の病変を指す

  • 大きいものでは 数cm〜10cm に達することも

  • 大きくなるほど 病変の一部にがんを含む確率(担癌率)が高まる

特に、

  • 肉眼的に“結節・こぶこぶ”が目立つタイプ(LST-NG)

  • 一部に陥凹を伴うタイプ

では、がん化リスクが高く、内視鏡的に分割切除(EMR)や粘膜下層剥離術(ESD)が必要となることも多いです。

 

3. 組織型でわかる「がん化しやすいポリープ」

 

顕微鏡レベルで見た「組織型」も、ポリープの危険度を判断するうえで極めて重要です。

大きくは、

  • 腫瘍性ポリープ(がん化の可能性あり)

  • 非腫瘍性ポリープ(基本的にがん化リスクが低い)

に分かれます。

 

3-1. 腺腫系ポリープ(Adenoma)

 

大腸ポリープの多くを占め、
大腸がんの“王道ルート”(adenoma–carcinoma sequence) と言われる発がん経路に関わるタイプです。

 

● 大腸腺腫(Conventional Adenoma)

  • 良性腫瘍だが、「前がん病変」として位置づけられる

  • 大きくなるほど、がん化リスクが上昇

  • 形状や組織レベルの異型度(軽度〜高度異型)によって危険度が変わる

 

● 絨毛腺腫(Villous Adenoma)

  • 表面がイソギンチャクのような細かいひだ(絨毛)で覆われたタイプ

  • 特に 直腸〜S状結腸 に発生しやすい

  • 担癌率(ポリープの中にがんを含む割合)が 58〜89% と非常に高く、
    最もがん化しやすい腺腫」とされています。

このため、絨毛成分を多く含むポリープは、たとえサイズが小さくてもより慎重な対応が必要です。

 

3-2. 鋸歯状病変(Serrated Lesions):見逃されやすい“別ルート”の前がん病変

 

近年、大腸がんの中には
「腺腫ルートとは異なる経路(鋸歯状経路)」 で発生するタイプがあることが分かってきました。
この経路に関わるのが**鋸歯状病変(Serrated Lesions)**です。

 

代表的なものは、

  • HP(過形成性ポリープ)

  • SSA/P(Sessile Serrated Adenoma/Polyp)=SSL(Sessile Serrated Lesion)

  • TSA(Traditional Serrated Adenoma)

です。

 

● SSA/P(SSL:Sessile Serrated Lesion)

  • 平坦〜なだらかな隆起で、通常のポリープよりも見つけにくい

  • 特に 右側大腸(盲腸・上行結腸) に多い

  • 中高年だけでなく、30〜40代の比較的若い女性 にも見られる

  • 一部は大腸がんの“前駆病変”と考えられており、癌化率 1.5〜20% とする報告も

  • 10mm以上のSSA/P(SSL)は内視鏡切除が強く推奨

「平らで見つけにくい上に、右側大腸に多く、がんにもなりうる」
という点から、“見逃すと怖いタイプ”のポリープと言えます。

 

● TSA(Traditional Serrated Adenoma)

  • 鋸歯状の構造を持つ腺腫で、縦じまのような独特の組織像

  • 主に 左側大腸(下行結腸・直腸) に多い

  • がん化リスクがあるため、5mm以上は内視鏡切除の適応

 

3-3. 非腫瘍性ポリープ:過形成性ポリープ(HP)

 

過形成性ポリープ(Hyperplastic Polyp:HP) は、
非腫瘍性ポリープの代表で、通常はがん化リスクが極めて低いとされています。

  • 直腸〜S状結腸に多く、5mm以下 の小さな病変がほとんど

  • このサイズ・部位のHPは、「切除せず経過観察でもよい」とされることが多い

 

ただし、

  • 10mm以上の大型HP

  • 右側大腸に生じる“鋸歯状病変に近いHP”

などは、がん化リスクが相対的に高くなるため、切除が望ましいとされています。

 

4. 見つかった大腸ポリープはどう治療する?

 

4-1. 内視鏡治療の基本

 

大腸ポリープや早期大腸がんに対する内視鏡治療には、主に以下の方法があります。

 

  • コールドポリペクトミー(CSP)

    • 5mm前後までの小さなポリープに対する“電気を使わない切除”

    • 穿孔や遅発性出血のリスクが低く、日帰りで行いやすい

 

  • 内視鏡的粘膜切除術(EMR)

    • ポリープの下に生理食塩水などを注入して持ち上げ、輪っか(スネア)で切除

    • 数mm〜20mm前後の病変が対象になることが多い

 

  • 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

    • 大きなLSTや早期がんに対し、粘膜下層を剥離して“一括切除”する高度な手技

    • 病変を一体として取り出せるため、がんの深さや脈管侵襲の評価が正確

 

がんが粘膜〜浅い粘膜下層にとどまっている場合は、
内視鏡治療だけで根治が得られるケースも少なくありません。

 

4-2. 切除後のフォローアップ

 

切除したポリープの

  • 大きさ

  • 個数

  • 組織型(腺腫・鋸歯状病変など)

  • がんの有無・深さ

 

によって、次回の大腸内視鏡のタイミング(3年後・5年後など)が決まります。
「一度ポリープが見つかった方」は、見つからなかった方より再発リスクが高いため、
定期的なフォローアップ内視鏡が特に重要
です。

 

5. まとめ:大腸ポリープは「小さいから安心」ではない

 

ポイントを整理すると——

  • 大腸ポリープは、大きさが大きいほどがん化リスクが高いが、
    小さくても危険なタイプ(陥凹型・一部鋸歯状病変など) が存在する

  • 特に

    • 陥凹型(0-IIc)

    • 平坦で見逃されやすい鋸歯状病変(SSA/P・SSL)

    • 絨毛腺腫
      は、サイズにかかわらず注意が必要

  • 「ポリープの段階で見つけて切除する」ことで、
    大腸がんの発症を大幅に減らせることが研究で示されている

  • 自分で危険度を判断するのは難しく、
    大腸内視鏡検査+専門医による評価 が不可欠

大腸ポリープ=すぐにがん、というわけではありません。
しかし、「ポリープのうちに見つけて取る」ことが、大腸がん予防の一番の近道です。

 

40歳を過ぎたら、一度は大腸内視鏡検査(大腸カメラ)によるチェックを受けることをおすすめします。
家族歴がある方、便通の変化や貧血・体重減少がある方は、年齢にかかわらず早めにご相談ください。

※この記事は一般的な医学情報であり、個々の診断や治療方針は、実際の内視鏡所見・病理結果・全身状態などに応じて主治医が総合的に判断します。

 

執筆・監修:山形県米沢市 きだ内科クリニック 院長 木田 雅文
(医学博士/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医)

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