「お酒がやめられない…アルコール依存症の症状・診断・治療まとめ【専門医解説】」第二弾
【悩んでいませんか?】お酒との付き合い方を見つめ直す - アルコール依存症とは?
「最近、お酒の量が増えた気がする」「飲まないと落ち着かない…」そんなふうに感じたことはありませんか?
アルコール依存症は、決して他人事ではありません。お酒を飲む人なら誰でもかかる可能性がある病気です。
全国で100万人以上がアルコール依存症と推計されていますが、治療を受けているのはごく一部に過ぎません。
アルコール依存症とは? - 意志の弱さではなく「脳の病気」
アルコール依存症は、長年の大量飲酒により脳が変化し、自分の意思で飲酒をコントロールできなくなる病気です。
最初は楽しいはずのお酒が、やがて「飲まずにはいられない」という強い欲求へと変わっていきます。これは単なる「飲み過ぎ」や「習慣」ではなく、アルコールがもつ依存性によるものです。
アルコール依存症は、専門的な治療が必要な病気です。
※当院は専門医療機関ではございません。主には、心療内科・精神科が該当します。
気づかぬうちに進行するアルコール依存症の段階
アルコール依存症は、徐々に進行します。
- 習慣飲酒:晩酌や外飲みが習慣化
- 境界期:
- 飲酒量が増え、酔うためには以前より多くの量が必要に(耐性の形成)
- 酔って記憶を失う「ブラックアウト」が起こり始める
- 初期(精神依存):
- 飲まないと落ち着かない
- 飲酒量のコントロールができなくなり、生活の中心が酒になる
- 中期(身体依存):
- 飲まないと「離脱症状」(手の震え・発汗・不安など)が現れる
- 症状を抑えるためにさらに飲む悪循環へ
- 嘘や隠しごと、朝からの飲酒(迎え酒)が始まる
- 後期:
- 飲酒が生活を破綻させ、仕事や家庭、健康にも深刻な影響が出る
アルコール依存症の主な症状
- 強い飲酒欲求(渇望):仕事中でも「飲みたい」と感じる
- コントロール困難:飲み始めると止まらない
- 離脱症状:手の震え・寝汗・不眠・吐き気・不安・幻覚・幻聴など
- 耐性の亢進:酔うために必要な量が増える
- 飲酒中心の生活:飲酒や酔いの回復で1日が終わる
- 問題が起きても飲酒継続:健康・家族・仕事に支障が出てもやめられない
- 罪悪感・自己嫌悪:飲酒後に後悔する
- 記憶障害(ブラックアウト):前夜の記憶がない
- 迎え酒:不快感を抑えるために朝から飲む
アルコール依存症がもたらす影響
アルコール依存症は、本人だけでなく家族や周囲にも大きな影響を与えます。
- 健康被害:肝臓病・膵炎・高血圧・糖尿病・がんなどのリスク増加
- 社会生活への支障:仕事の低下・欠勤・失業・飲酒運転など
- 家庭崩壊のリスク:不和・経済的困窮・別居・離婚、子どもへの悪影響
アルコール依存症のスクリーニングテスト「AUDIT」とは?
AUDIT(Alcohol Use Disorders Identification Test) は、
世界保健機関(WHO)が開発した、アルコール依存症や飲酒問題を早期に発見するための質問票です。
【AUDITの特徴】
- 10問の質問に答えるだけ
- 飲酒量や頻度、飲酒による問題(健康・人間関係など)をチェック
- 得点によってリスクを判定
【AUDITの判定目安】
総得点 |
判定 |
内容 |
0~7点 |
低リスク |
節度ある飲酒 |
8~14点 |
中リスク |
飲酒による健康リスクあり。見直しが必要 |
15点以上 |
高リスク(依存症疑い) |
専門医への相談をおすすめ |
AUDITをお試しいただけます。こちらのサイト
アルコール依存症の診断基準(ICD-10より)
アルコール依存症は、世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICD-10)でも「病気」として定義されています。
以下の 6つの項目のうち、過去1年間で3つ以上が当てはまる場合、アルコール依存症と診断されます。
【ICD-10 アルコール依存症診断基準】
- 強い飲酒欲求(渇望)
- 「どうしても飲みたい」「飲まずにいられない」と強く感じる
- コントロール障害
-
- 飲み始めたら止められない・量や時間を自分で調整できない
- 離脱症状の出現
-
- 飲まないと手の震え・発汗・不安・イライラ・不眠などの症状が出る
- 耐性の増大
-
- 以前より多く飲まないと酔えなくなる
- 飲酒中心の生活
-
- 飲酒や回復が生活の中心になり、他の興味や活動が失われる
- 明らかな害があっても飲酒を続ける
-
- 健康・仕事・家族などに悪影響が出ても、飲むのをやめられない
【もう一人で悩まないで】アルコール依存症は治療できる病気です
「やめたいのに、お酒がやめられない」「家族の飲酒で困っている」――
そんな悩みは、決してあなただけではありません。
アルコール依存症は専門的な治療で回復が可能な病気です。
専門医療機関では、一人ひとりに合わせた治療で、断酒や減酒、社会復帰までしっかりサポートします。
治療の目標は「断酒」でも、状況によって「減酒」も選択肢
基本的には**断酒(完全にやめる)を目指しますが、
軽症の場合や社会生活が保たれている方には減酒(飲酒量を減らす)**から始めることもあります。
ただし、以下の場合は断酒が必要です:
- 入院が必要なほど症状が重い
- 生活や健康への深刻な影響がある
- 重い離脱症状が出ている
アルコール依存症の主な治療法
1. 薬物療法(飲酒欲求や離脱症状を抑える)
■ 断酒補助薬【レグテクト(一般名:アカンプロサート)】
対象となる方
- 断酒を目標としている方
- 渇望感が強く、断酒がつらいと感じる方
作用・効果
- 脳の興奮を抑えて、「飲みたい気持ち(渇望感)」を和らげる
- 断酒期間を伸ばし、再飲酒のリスクを下げます
主な副作用
- 下痢が出ることがあります(整腸剤で改善することも)
注意点
- 腎臓の機能が悪い方は使用できない場合があります
- 肝臓には負担が少ない薬です
■ 抗酒薬【ノックビン(ジスルフィラム)/シアナマイド】
対象となる方
- 強い意志で断酒したい方
- 家族や周囲のサポートが得られる方
作用・効果
- 飲酒すると頭痛・吐き気・動悸など強い不快な症状が出る
- 「飲んだらつらい」ことで飲酒を防ぐ
主な副作用・注意点
- 少量のアルコールでも重い反応が出るため厳重注意
- 化粧品や料理酒などにもアルコール成分が含まれる場合がある
- 医師・家族の管理のもとで服用することが大切
■ 飲酒量低減薬【セリンクロ(一般名:ナルメフェン)】
対象となる方
- 「完全な断酒は難しいが、お酒の量を減らしたい」と考えている方
- 減酒から始めたい方
作用・効果
- 飲酒による「快感」や「飲まないと気持ち悪い」という感覚を抑える
- 飲酒量が自然と減り、飲み過ぎる日が減ることが期待されます
主な副作用
- 吐き気、めまい、頭痛、眠気など(多くは軽度)
注意点
- 飲酒予定の1~2時間前に服用
- 減酒への意欲がある方が対象
- 「飲み続けたいから薬を飲む」という使い方はできません
- 状況によっては断酒治療が優先される場合もあります
■ 離脱症状を和らげる薬(例:ベンゾジアゼピン系)
対象となる方
- 断酒開始時に不安・不眠・手の震えなどの症状が出る方
作用・効果
- 不安・不眠・イライラを和らげ、断酒を安全にスタートさせる
主な副作用
- 眠気やふらつき(長期連用は依存性のリスクがあるため短期間使用)
2. 認知行動療法(GTMACK・SMARPPなど)
- 飲酒のきっかけを知り、対処法を学ぶ
- ストレス解消法や生活改善を実践
3. 内科治療
- 肝臓やその他の体の不調も同時にケア
- 長期フォローで健康を守ります
4. 自助グループ(AAや断酒会)
- 同じ悩みを持つ仲間と支え合い、断酒を続ける力に
5. デイケア
- 通院しながら生活リズムを整え、人との交流を深めます
治療を続けるために大切なこと
- 本人の「治したい」気持ちが何より大切
- 家族の理解と支えが回復の力になります
- 万が一再飲酒しても、諦めずにまた一緒に立て直せば大丈夫
まずは専門医療機関に相談を
アルコール依存症は、治療できる病気です。
専門機関では医師・看護師・心理士などがチームで支援します。
「もしかして…」と思ったら、勇気を出して相談してみましょう。
あなたの一歩が、健康な未来につながります。
※当院は専門医療機関ではございません。主には、心療内科・精神科が該当します。