【医師監修】マダニ媒介感染症(SFTS・日本紅斑熱・ライム病・ダニ媒介脳炎)|症状・予防・最新治療を総まとめ【春〜秋は要注意】
【医師監修】マダニ媒介感染症(SFTS・日本紅斑熱・ライム病・ダニ媒介脳炎)|症状・予防・最新治療を総まとめ【春〜秋は要注意】
マダニ媒介感染症は、野外活動・農作業・レジャー時に病原体をもつマダニに咬まれて感染する重篤な疾患群です。日本でも患者報告は年々増加し、2025年は暫定値で過去最多を更新しました。特に春〜秋は活動期のため、予防と早期対応が極めて重要です。(朝日新聞)
深刻化する脅威と最新動向(SFTS/日本紅斑熱/ライム病/TBE)
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SFTS(重症熱性血小板減少症候群)は国内致死率が約27%と高く、2024年には国内初のヒト-ヒト感染(医療従事者)が確認されました。2024年に抗ウイルス薬ファビピラビルが世界で初めてSFTS適応で日本承認となり、治療選択肢が前進しています。(PMC)
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**ダニ媒介脳炎(TBE)**は北海道などで散発的発生があり、**2024年9月に国内初のワクチン(Ticovac)**が発売されました。(PHARMA JAPAN)
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地域拡大の兆候:**岐阜県で初のSFTS患者報告(2025年7月)**など、従来の西日本中心からの広がりも注視が必要です。(beaconbio.org)
日本で警戒すべき主なマダニ媒介感染症
疾患名 | 病原体 | 媒介動物 | 潜伏期間 | 主な症状 | 予後/特徴 | 治療 |
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SFTS | SFTSウイルス | フタトゲチマダニ、キチマダニ 等 | 6–14日 | 発熱、消化器症状(嘔吐・下痢)、血小板/白血球減少 | 国内致死率 約27% | 対症療法+抗ウイルス薬(ファビピラビル)※2024年に日本で適応承認 (PMC) |
日本紅斑熱 | 日本紅斑熱リケッチア | キチマダニ、フタトゲチマダニ | 2–8日 | 発熱、頭痛、発疹(四肢末端に多い)、肝機能障害 | 治療遅延で重症化・死亡例 | テトラサイクリン系 |
つつが虫病 | ツツガムシ病リケッチア | ツツガムシ幼虫 | 5–14日 | 高熱、倦怠感、発疹(体幹)、刺し口 | ー | テトラサイクリン系 |
ダニ媒介脳炎(TBE) | TBEウイルス | ヤマトマダニ、シュルツェマダニ 等 | 7–14日(極東亜型) | 発熱・嘔気→脳炎症状 | 極東亜型は致死率20%超、後遺症も | 特異的治療なし(対症療法)/国内でワクチン入手可(Ticovac) (PHARMA JAPAN) |
ライム病 | Borrelia burgdorferi など | シュルツェマダニ 等 | 数日–数週間 | 遊走性紅斑、神経症状・関節炎 | 治療後症状が残ることも | ドキシサイクリン/セフトリアキソン等 |
補足:SFTSはマダニ経由が主体ですが、患者の血液・体液、発症した犬・猫の咬傷や体液からの感染事例も報告されています(ヒト-ヒト、動物→ヒト)。医療・介護・家族看護時はPPE徹底が必須です。(朝日新聞)
SFTSの「最新治療」と感染経路のポイント
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抗ウイルス薬の承認:ファビピラビルが2024年にSFTS適応で国内承認(世界初)。重症化が見込まれる症例で使用が検討されます。(Nature)
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ヒト-ヒト感染の国内確認:2024年3月、患者の死後処置等で血液曝露した若手医師の感染が公式発表され、その後**詳細な症例報告(2025年)**が公表されました。(朝日新聞)
マダニ・ツツガムシから身を守る「具体策」
野外活動時の服装・行動
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肌の露出を最小化:長袖・長ズボン・足を覆う靴。シャツ裾はズボン内、ズボン裾は靴下 or 長靴の中。首はタオル/ハイネックで保護。(厚生労働省)
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忌避剤を併用:DEETまたはイカリジン配合で**「マダニ忌避」**表記のある製品を、表示通りに使用。(厚生労働省)
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明るい色の服:付着ダニを視認しやすい。地面に直接座らず敷物を活用。(厚生労働省)
帰宅後のチェックと対処
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全身確認:入浴・シャワーで腋・鼠径・膝裏・胸の下・頭髪内を重点チェック。上着や作業着は屋内に持ち込まない。(厚生労働省)
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刺咬に気づいたら:無理に引き抜かない(逆流で病原体侵入・口器遺残の恐れ)。皮膚科など医療機関で除去を。(niid.jihs.go.jp)
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経過観察:数週間は発熱・頭痛・消化器症状に注意。症状が出たら**「マダニに咬まれた」**旨を受診時に必ず伝える。(受診目安づくりに重要)
動物からの感染予防
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ペット対策:外に出る犬猫は定期的なマダニ予防薬を。猫は室内飼育推奨。
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接し方:触れた後は手洗い。口移しなど過度な接触は避ける。
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発症動物:熱など異常があれば手袋・マスク着用で咬傷/体液曝露を避け、速やかに獣医受診。※SFTSの動物→ヒト事例も報告あり。(PMC)
よくある質問(FAQ)
Q. 日本で初めて報告されたSFTSのヒト-ヒト感染は、医療従事者でしたか?
A. はい。患者の血液曝露後に若手医師が感染した事例が2024年3月に公表され、2025年に症例論文が掲載されています。(朝日新聞)
Q. TBE(ダニ媒介脳炎)のワクチンは日本で受けられますか?
A. 受けられます。****2024年9月にTicovacが国内発売。リスク地域在住・渡航や屋外活動が多い方に選択肢となります。詳細は医療機関でご相談ください。(PHARMA JAPAN)
受診の目安(当院の考え方)
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発熱+ダニ刺咬歴(数週間以内)
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発疹+倦怠感/消化器症状
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犬・猫の咬傷や体液曝露後の発熱
いずれも早期受診を。必要に応じて血液検査・画像検査・感染症専門医と連携します。
院内向け(医療者)メモ:SFTS疑い患者の診療・処置・遺体ケアでは標準予防策+接触・飛沫対策、状況により眼防護を徹底(採血・CV抜去・吸引等は特に注意)。(朝日新聞)
参考・根拠(主要ソース)
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SFTSの致死率・疫学:国内CFR約27%(論文/NIID)。(PMC)
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SFTSのヒト-ヒト感染(日本初):2024年3月公表(報道/NIID発表)、2025年症例報告。(朝日新聞)
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ファビピラビルのSFTS適応承認(2024年):解説論文・大学発表・業界紙。(Nature)
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TBEワクチン(Ticovac)国内発売(2024年9月):業界紙。(PHARMA JAPAN)
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予防(服装・忌避剤・帰宅後チェック):厚労省/NIID等。(厚生労働省)
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地域動向:岐阜県で初のSFTS患者報告(2025年7月)。(beaconbio.org)