【2025年改訂】65歳以上の肺炎球菌ワクチン:PCV21/PCV20/ニューモバックスの選び方と接種間隔
【2025年改訂版】65歳以上の肺炎球菌ワクチン(PPSV23・PCV20・PCV21等)種類・選び方・接種スケジュール
「高齢者の肺炎球菌ワクチンは、結局どれを打てばいい?」という疑問に向けて、最新の合同ステートメント**「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第7版・2025年9月30日改訂)」**と関連資料をもとに、ワクチンの種類・特徴・選択の考え方・推奨スケジュールをわかりやすく整理します。 JSVac+2一般社団法人日本呼吸器学会+2
1. 肺炎球菌ワクチンは主に4種類(日本で接種可能)
現在、成人(特に65歳以上)で話題になる肺炎球菌ワクチンは主にPPSV23/PCV15/PCV20/PCV21です。なお、PCV13(プレベナー13)はPCV20の発売に伴い、市場から引き上げられ販売終了となっています。 Pfizer Japan
2. 各ワクチンの特徴(違いが一瞬でわかる要点)
① PPSV23(ニューモバックス®NP)
② PCV15(バクニュバンス®)
③ PCV20(プレベナー20®)
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20価の結合型ワクチン。PCV13に**7血清型(8、10A、11A、12F、15B、22F、33F)**を追加した設計です。 JSVac+1
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日本では2024年8月に発売され、プレベナー13は販売終了へ移行しました。 Pfizer Japan
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小児では2024年10月から定期接種でPCV20が基本とされています(参考)。 Ministry of Health, Labour and Welfare+1
④ PCV21(キャップバックス®)
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21価の結合型ワクチンで、成人で増えている血清型を含む設計。 Kansensho+1
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国内では2025年8月に薬事承認、その後2025年10月に発売されています。 Kansensho+1
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血清型カバー率について、国内データでは PCV21のカバー率が約80%前後で推移し、肺炎球菌性肺炎(65歳以上)に対しては**72.3%**とする報告も記載されています。 JSVac
3. 2025年改訂(第7版)で重要なポイント
ポイント①:任意接種は「PCV20 or PCV21」が軸に
合同ステートメントでは、PCV20/PCV21の選択肢が広がったことを踏まえた接種の考え方が示されています。 JSVac+1
ポイント②:PPSV23の“再接種”は原則おすすめしない流れへ
第7版では、**PPSV23接種後の同ワクチン再接種を「原則として選択肢としない」**と明記されています。 JSVac+1
4. 推奨接種スケジュール(65歳以上:接種歴別)
A)これまで一度も肺炎球菌ワクチンを打っていない方(PPSV23未接種)
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定期接種(公費)を優先するなら:
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65歳の対象年度にPPSV23(定期接種)
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その後、**1年以上あけてPCV20またはPCV21(任意)**を検討 JSVac+1
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任意接種(自費)でシンプルにいくなら:
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PCV20またはPCV21を単回接種(任意) JSVac+1
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連続接種を選ぶ場合:
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PCV15→(1〜4年以内)→PPSV23 JSVac+1
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B)PPSV23(ニューモバックス)のみ接種済みの方
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前回PPSV23から1年以上あけて、PCV20またはPCV21を接種(任意)。 JSVac+2JSVac+2
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PPSV23の再接種は原則行わない。 JSVac+1
C)PCV13/PCV15/PCV20を接種済みの方
5. 65歳未満でも「ハイリスク」は接種推奨(任意接種)
慢性心疾患・肺疾患・腎疾患・肝疾患・糖尿病・免疫不全など、肺炎球菌感染症のリスクが高い方は、年齢にかかわらず接種が検討されます。選択肢はPCV20/PCV21の単回接種、またはPCV15→PPSV23の連続接種が中心です。 JSVac+2Kansensho+2
まとめ
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65歳以上の肺炎球菌ワクチンは、定期接種=PPSV23、任意接種はPCV20/PCV21が重要な選択肢です。 JSVac+1
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第7版では、PPSV23の再接種は原則おすすめしない方針が明確化されました。 JSVac+1
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どのルートが最適かは、接種歴・基礎疾患・自治体助成で変わるため、接種前に医療機関で整理するのが確実です。 Kansensho+1
追記:PCV20(プレベナー20)とPCV21(キャップバックス)、どちらが良い?
結論として、**65歳以上の成人が「いま日本で多い肺炎球菌(血清型)をより広くカバーしたい」**という観点では、PCV21(キャップバックス)のほうがカバー率が高いと考えられます。 JSVac+1
一方で、PCV20(プレベナー20)も従来ワクチンより対象血清型が広く、安全性・免疫のつきやすさも確認されているため、接種の価値が十分にあるワクチンです。 JSVac+1
1)最大の違い:血清型カバー率(=予防できる範囲)
ガイドライン(第7版)では、国内データとして、肺炎球菌性肺炎(2019〜2022年)における血清型カバー率が示されています。
65歳以上では PCV21:72.3% に対し PCV20:42.8% とされ、PCV21が約30%高いことが報告されています。 JSVac
また、成人IPD(侵襲性肺炎球菌感染症)の国内サーベイランスでも、65歳以上における血清型カバー率はPCV21が概ね約80%前後で推移し、PCV20より高い傾向が示されています。 JSVac+1
2)設計思想の違い:PCV21は「成人で増えている型」を狙う
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**PCV21(キャップバックス)**は、成人の疾病負荷を踏まえて設計された結合型ワクチンで、**PCV21固有の8血清型(15A、15C、16F、23A、23B、24F、31、35B)**を含みます。 JSVac
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**PCV20(プレベナー20)**は、従来のPCV13に血清型を追加してカバーを拡大した結合型ワクチンで、小児定期接種にも用いられる標準的な選択肢です。 pfizer.co.jp+1
3)安全性・免疫原性(抗体のつきやすさ)は「大きな差がない」
ガイドラインでは、PCV20とPCV21は安全性・免疫原性に大きな違いは認められない一方で、血清型カバー率はPCV21がPCV20より優れると整理されています。 kansensho.or.jp+1
また、臨床試験でも、共通血清型に対してPCV21はPCV20に対し非劣性(同等の免疫反応)であり、安全性プロファイルにも明確な差はないと報告されています。 JSVac
どちらを選ぶべき?(目安)
PCV21(キャップバックス)を選びやすい方
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日本の成人で多い血清型を、できるだけ広くカバーしたい
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COPD・喘息など慢性呼吸器疾患があり、肺炎リスクをできる限り下げたい
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“いまの流行”重視で、最新設計のワクチンを選びたい JSVac+1
PCV20(プレベナー20)を選びやすい方
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取り扱い医療機関が多く、接種しやすさ(供給・導線)を重視したい
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結合型ワクチンとしての実績が広く、標準的な選択肢を選びたい pfizer.co.jp+1
最後に:迷ったら「接種歴・間隔・リスク」で決める
選択は、①これまでの肺炎球菌ワクチン接種歴、②前回からの経過(目安:1年以上など)、③基礎疾患や重症化リスク、④費用・在庫状況で変わります。どちらを選んでも、従来の選択肢より“より広いカバー”と“結合型ワクチンとしての免疫”が期待できます。 JSVac
執筆・監修:きだ内科クリニック 院長 木田 雅文
(医学博士/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医)
