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尿酸値が低いと言われたら:低尿酸血症の原因とリスク(EIAKI/結石)を解説

[2025.12.04]

低尿酸血症(尿酸値2.0mg/dL以下)とは?腎性低尿酸血症(RHUC)の原因・合併症リスク・予防策を解説

 

 

健康診断で「尿酸が低い」と言われたとき、痛風とは逆なので安心してしまう方も少なくありません。ところが、低尿酸血症の中でも日本人に比較的多い腎性低尿酸血症(RHUC:Renal Hypouricemia)は、普段は無症状でも、特定の状況で運動後急性腎障害(EIAKI)や尿路結石などの合併症リスクが知られています。ここでは、低尿酸血症の基礎から、RHUCの原因・注意点・予防と管理のポイントまで、わかりやすく整理します。

 

1. 低尿酸血症の定義と特徴(日本人に多いRHUCとは)

 

低尿酸血症は、一般的に血清尿酸値が2.0mg/dL以下の状態を指します。日本では、頻度は**男性約0.2%・女性約0.4%**と推定されており、決して珍しすぎる所見ではありません。

低尿酸血症の原因にはいくつかありますが、日本人で多いのが **腎性低尿酸血症(RHUC)**です。RHUCは、腎臓の尿細管で尿酸を再吸収する「トランスポーター」に関わる遺伝子(例:URAT1、GLUT9)の変異により、尿中へ尿酸が過剰に排泄されて起こります。

ポイント:RHUCは“体質”として見つかることが多く、ふだん自覚症状がない一方で、合併症予防の視点が重要です。

 

2. 低尿酸血症(RHUC)で注意したい合併症リスク

 

低尿酸血症、特にRHUCで重要なのは、主に次の2つです。

 

① 運動後急性腎障害(EIAKI)—最も注意すべき合併症

 

RHUCで最も重篤になり得るのが**運動後急性腎障害(EIAKI)**です。

  • 起こりやすい状況:短距離走(ダッシュ)、筋トレなどの無酸素運動の数時間後〜翌日に発症することがあります

  • 主な症状:強い腰背部痛、吐き気・嘔吐など

  • 考えられる仕組み:尿酸には抗酸化作用があり、尿酸が極端に低いと運動で増える活性酸素への防御が弱くなり、腎血管の攣縮や腎血流低下を介して腎障害につながる可能性が考えられています

  • 経過:多くは安静と補液で2週間〜1か月程度で改善しますが、場合によっては一時的に透析が必要になることもあります

  • 再発:再発率が**約20%**とされ、再発予防が重要です

 

② 尿路結石(腎結石・尿管結石)

 

RHUCでは尿中に尿酸が多く出るため、尿中尿酸濃度が高くなり結晶化しやすいことが結石の一因になります。

  • できやすい結石:尿酸結石だけでなく、シュウ酸カルシウム結石を合併しやすいことも知られています

  • 症状:背部痛、血尿、疝痛発作など(詰まる部位で症状が変わります)

 

③ その他:酸化ストレスや血管内皮機能への影響(報告レベル)

 

尿酸の抗酸化作用が低下することで、酸化ストレスが増えやすい可能性、極端な低値で血管内皮機能低下がみられる可能性なども報告されています(※個人差が大きく、解釈には注意が必要です)。

 

3. RHUCの対応策(予防・管理):治療の中心は「合併症を防ぐこと」

 

RHUCには現時点で根治療法が確立しているわけではありません。実臨床では、生活指導と合併症予防が中心です。

 

① EIAKI(運動後急性腎障害)を防ぐ:水分・運動・薬の3点セット

 

  • 十分な水分補給:運動前・運動中はこまめに補給し、脱水を避ける(運動前に数百mLを目安に体格・汗量で調整)

  • 運動強度の調整:ダッシュや追い込み系トレーニングなど、強い無酸素運動の反復はリスクになりやすいため、体調や状況に応じて負荷を調整

  • NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)に注意:風邪薬や痛み止めに含まれるNSAIDs内服中に強い運動をすると、急性腎障害のリスクが高まるとされます。内服中は激しい運動を避けるのが安全です

 

② 尿路結石を防ぐ:飲水+必要に応じて尿アルカリ化

 

  • 飲水(最重要):尿中尿酸濃度を下げるため、1日尿量2,000mL以上を目標に水分摂取(心不全・腎不全などで制限が必要な方は医師と相談)

  • 尿のアルカリ化:尿が酸性だと尿酸が結晶化しやすいため、必要に応じてクエン酸製剤などで尿pHを6.0〜7.0に調整し、結石予防や溶解を図ることがあります

 

③ 薬物療法(再発予防):XOR阻害薬は“状況により検討”

 

キサンチンオキシドレダクターゼ(XOR)阻害薬(例:アロプリノール等)を運動前に用いることで、酸化ストレスを抑え、EIAKIの発症・再発を下げる可能性が示唆されています。
ただし、ガイドライン上は一律に推奨できるほどの根拠が十分ではない
とされ、再発を繰り返す方や競技スポーツなど高リスクの方で医師が個別に判断する位置づけです。

 

4. 検査と受診の目安:尿酸値2.0mg/dL以下なら一度評価を

 

健診などで血清尿酸値が2.0mg/dL以下の場合、RHUCが疑われます。無症状でも合併症リスクを把握するため、一度は医療機関(内科/腎臓内科/泌尿器科)で評価を受けることがすすめられます。

 

よく行う検査

  • 血液検査(腎機能、尿酸など)

  • 尿検査(尿中尿酸排泄の評価:尿酸排泄率など)

 

早めに受診したい症状

  • 運動後に強い腰背部痛が出る/吐き気・嘔吐がある

  • 血尿、結石の既往、背部痛を繰り返す

  • 尿量低下、むくみ、強いだるさ など腎機能低下が疑われる症状

 

まとめ:低尿酸でも「放置しない」—合併症予防が最大のポイント

 

低尿酸血症、とくに腎性低尿酸血症(RHUC)は無症状のことが多い一方で、運動後急性腎障害(EIAKI)や尿路結石といった合併症を起こす可能性があります。
尿酸値が2.0mg/dL以下と指摘されたら、原因の確認と合併症予防のために一度医療機関で評価を受け、水分補給・運動強度の調整・NSAIDsの注意など、現実的な対策を始めていきましょう。

※本記事は一般的な情報提供であり、診断・治療の代替ではありません。既往症や内服薬がある方は、必ず医師にご相談ください。

執筆・監修:きだ内科クリニック 院長 木田 雅文
(医学博士/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医)

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