口腔内細菌(歯周病菌)と消化器がん|胃がん・大腸がんとの関係と予防の要点|きだ内科クリニック
口腔内細菌(歯周病菌)と消化器がんの関係|知っておきたいポイントと予防の考え方
「歯周病は口の中だけの問題」と思われがちですが、近年は口腔内細菌(オーラルマイクロバイオーム)の乱れが、食道・胃・大腸・膵臓などの消化器疾患と関わる可能性が報告され注目されています。
本記事では、患者さん向けに「何がわかっていて、何がまだ研究段階なのか」を整理しつつ、今日からできる対策と受診の目安をまとめます。
結論:口腔ケア+消化器の検査は“セット”で考えると安心
口腔内細菌と消化器がんの研究は進んでいますが、現時点では多くが「関連が示唆されている」段階のものも含まれます。
一方で、歯周病の予防・治療(口腔ケア)は全身の炎症負担を減らす意味でも重要で、さらに胃カメラ・大腸カメラなどの適切な検査で早期発見につなげることが大切です。
きだ内科クリニックは、生活習慣病の管理および内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)に力を入れている専門クリニックです。
口腔内細菌はなぜ消化器に影響しうるの?
口腔内には多くの細菌が常在し、日々の嚥下で唾液と一緒に消化管へ流れ込みます。歯周病などで口腔内環境が悪化すると、細菌や炎症性物質が増え、次のような経路で全身へ影響する可能性が考えられます。
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唾液とともに食道〜胃〜腸へ到達
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歯ぐきの炎症・出血を介して血流へ入り、遠隔臓器に影響
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慢性炎症が続き、発がんに関わる環境が整う可能性
関連が指摘される主な消化器がん(食道・胃・大腸・膵臓・肝)
研究では、特定の口腔内細菌(歯周病菌を含む)が、がん組織や便・唾液の細菌叢の特徴として見つかることが報告されています。
食道がん
歯周病や口腔内環境の悪化と、食道がんリスクの関連が報告されています。背景には、口腔内細菌が食道へ到達し、炎症環境が続くことなどが想定されています。
胃がん
ピロリ菌だけでなく、胃内の細菌叢(微生物の集まり)に注目が集まっています。萎縮性胃炎や胃酸分泌が低い状態では、口腔由来の細菌が胃内に定着しやすくなる可能性が指摘されています。
大腸がん
大腸がん組織から、口腔由来と考えられる細菌が検出されることがあり、腫瘍の形成・進行との関連が研究されています。
膵臓がん・肝がん
口腔内細菌叢の“特徴”が膵臓がんと関連する可能性、歯周病菌が肝臓の炎症に関与する可能性など、研究が進んでいます(※いずれも研究途上のテーマを含みます)。
考えられるメカニズム(わかりやすく4つ)
口腔内細菌が消化器がんに関わる仕組みとして、主に次が研究されています。
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炎症が長引く(慢性炎症):粘膜に炎症が続くことで、発がんに関わる環境が形成されやすくなる
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DNAへのダメージ:活性酸素(ROS)などを介して細胞の傷つきが増える可能性
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細胞の増殖シグナルが活性化:腫瘍に有利なシグナル伝達が働く可能性
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免疫の働きが変化:がん細胞が免疫から逃れやすい“場”が作られる可能性
今日からできる対策:口腔ケア+生活習慣+必要な検査
1)口腔ケア(まずはここが基本)
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歯みがきに加えてフロス/歯間ブラシを習慣化
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歯ぐきの腫れ・出血がある場合は放置せず、歯科で歯周病チェック
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定期的なクリーニングで口腔内環境を整える
2)生活習慣(消化器がん全般のリスク対策にも)
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禁煙、飲酒量の見直し
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体重管理、運動、食物繊維の摂取
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逆流症状(胸やけ等)がある方は早めの相談
3)検査(“症状がなくても”重要)
とくに「年齢」「家族歴」「健診での異常」「症状」がある方は、胃カメラ・大腸カメラなどの検査が早期発見につながります。
当院は消化器内科・胃内視鏡検査・大腸内視鏡を掲げ、診療メニューとして胃カメラ・大腸カメラ・大腸ポリープ切除などにも対応しています。米沢市の消化器・内視鏡内科なら、きだ内科クリニック
受診の目安(この症状は要チェック)
次のような症状が続く場合は、早めに医療機関でご相談ください。
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胸やけ、胃もたれ、胃痛、吐き気
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食欲低下、体重減少
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便通異常(下痢・便秘が続く)
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血便・黒色便、便潜血陽性
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口臭が気になる/歯ぐきの出血が続く(歯科受診も推奨)
当院サイトの「症状で探す」にも、胃もたれ・胸やけ、体重減少、血便・下血、便潜血、口臭などの項目があります。米沢市の消化器・内視鏡内科なら、きだ内科クリニック
よくある質問(FAQ)
Q. 歯周病があると、必ずがんになりますか?
A. いいえ。多くは「関連が示唆される」という段階の研究も含み、歯周病=がん確定ではありません。ただし口腔ケアは全身の健康管理として重要です。
Q. 口腔ケアだけで、がんは予防できますか?
A. 口腔ケアは大切ですが、がん予防はそれだけで完結しません。生活習慣の見直しと、必要に応じた内視鏡検査などが現実的な対策です。
Q. 何科に相談すればいい?
A. 歯ぐきの腫れや出血は歯科へ、消化器症状や健診異常(便潜血など)は消化器内科へ。両方にまたがる場合は、まずは消化器内科で検査の要否を相談するのも一案です。
まとめ
口腔内細菌(歯周病菌など)と消化器がんの関係は、マイクロバイオーム研究の進展で注目されています。大切なのは、不安を煽られすぎずに、口腔ケアを整えつつ、必要な検査で早期発見につなげること。
気になる症状や健診結果がある方は、お気軽にご相談ください。
執筆・監修:きだ内科クリニック 院長 木田 雅文
(医学博士/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医)
