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高HDLコレステロール血症(高HDL血症)とは?原因・リスク・対応をわかりやすく解説【HDLが高すぎる場合】

[2025.12.04]

高HDLコレステロール血症(高HDL血症)のリスク・原因・対応を徹底解説

 

 

高HDLコレステロール血症(高HDL血症)は、HDLコレステロール(HDL-C)が基準より高い状態を指します。HDL-Cは「善玉コレステロール」として知られ、従来は高いほど動脈硬化リスクが低いと考えられてきました。

しかし近年、研究報告により 「HDL-Cが極端に高い場合、心血管疾患や死亡リスクが上がる可能性がある」 ことが示唆され、“HDLは高ければ高いほど良い”という常識は見直されつつあります。

 

1. 高HDLコレステロール血症の定義(基準値)と現状

 

一般的に、血清HDL-C値が 80〜100mg/dL以上 の状態を高HDLコレステロール血症(高HDL血症)と呼びます。

HDLは、血管壁の余分なコレステロールを回収して肝臓へ戻す「コレステロール逆転送系」に関わるため、通常は動脈硬化の防御因子とされます。一方で、日本の大規模解析(EPOCH-JAPAN研究など)では、HDL-Cが90mg/dL以上の“極めて高い群”で、冠動脈疾患や脳梗塞による死亡リスク上昇が報告されています。

 

2. 高HDL血症の主な原因(遺伝性/二次性)

 

高HDL血症の原因は大きく 原発性(遺伝的)続発性(二次性) に分けられます。

 

A. 原発性(遺伝性)の原因:CETP欠損症が重要

 

日本人の高HDL血症で特に重要なのが、CETP(コレステリルエステル転送蛋白)欠損症です。

  • CETP欠損症
    CETPはHDLからLDLやVLDLへコレステロールを転送するタンパク質です。遺伝的にCETPが欠損すると転送が滞り、HDLにコレステロールが蓄積してHDL-Cが著しく上昇します(ホモ接合体で150〜250mg/dLに達することも)。日本人に多い遺伝子変異として知られています。

  • その他の遺伝的要因
    肝性リパーゼ(HL)欠損症、家族性高αリポタンパク血症、SR-BI遺伝子変異など

 

B. 続発性(二次性)の原因:飲酒・薬・病気

 

  • アルコール多飲:長期間の大量飲酒でCETPの働きが低下し、HDL-Cが上がることがあります

  • 薬剤:フィブラート系、ニコチン酸、スタチン、エストロゲン製剤、フェニトイン、インスリンなど

  • 疾患:原発性胆汁性胆管炎(PBC)、甲状腺機能亢進症 など

 

3. HDLが「高すぎる」となぜリスク?鍵は“量”より“質(機能)”

 

高HDL血症で注目されるのは、HDLの数値ではなく、HDLが本来持つ働き(機能)が損なわれる可能性です。

 

  • Dysfunctional HDL(機能不全HDL)
    HDLには抗酸化・抗炎症・血管内皮保護などの作用がありますが、条件によっては機能が低下し、動脈硬化を抑えられない(あるいは促進に傾く)可能性があります。

  • コレステロール引き抜き能(CEC)の低下
    HDL-Cが高くても、血管壁からコレステロールを回収する能力(Cholesterol Efflux Capacity)が低いと、動脈硬化予防につながりません。

  • CETP欠損症のパラドックス
    HDL-Cが非常に高くなる一方、動脈硬化性疾患が増えるという報告もあり、単純に“長寿”とは言い切れないと考えられています。

 

4. 高HDL血症と診断されたときの対応(検査・治療方針)

 

A. まずは原因の切り分け(鑑別)が最優先

 

最初に、**二次性原因(飲酒・薬剤・甲状腺機能など)**を確認し、除外します。除外できた場合は、CETP欠損症など原発性を疑います。

  • 確認・検査の例
    一般採血に加え、AST/ALT、TSHなどで原因を探索。
    また、HDL-Cが100mg/dLを超えるなどの高値では、頸動脈エコー等で動脈硬化の進行度を確認することが推奨されます。

 

B. 治療の考え方:HDLを下げるより「LDL管理」を優先

 

現時点で、高HDL血症そのものを下げる確立したガイドラインはありません。

  • LDLコレステロール(悪玉)の管理が最重要
    HDLが高くても、LDLが高いと動脈硬化リスクは残ります。LDLが高い場合は、HDL値に関係なくスタチン等での管理が必要です。

  • 生活習慣の見直し(特に飲酒)
    アルコール多飲が背景にある場合は、節酒が基本です。

  • CETP欠損症が疑われる場合
    「プロブコール」が使われることがあります(HDLのコレステロール引き抜き能を亢進し、黄色腫の消退などが報告)。ただし、心血管イベントの二次予防に関する確固たるエビデンスはまだ十分ではありません。

 

まとめ:HDLが高い=安心、とは限らない

 

高HDLコレステロール血症(高HDL血症)は、特に90〜100mg/dLを超えるような著明な高値で、遺伝(CETP欠損症など)やアルコール過剰、薬剤・疾患が背景にある可能性があります。
重要なのは、HDL-Cの高さだけで判断せず、LDL-C、血圧、血糖、喫煙など他のリスク因子を含めて総合的に管理し、必要に応じて**動脈硬化の評価(頸動脈エコーなど)**を行うことです。

※本記事は一般的な情報提供であり、診断や治療の代替ではありません。検査値に不安がある場合は医療機関でご相談ください。

執筆・監修:きだ内科クリニック 院長 木田 雅文
(医学博士/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医)

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