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エコーで甲状腺結節が見つかったら?|95%が良性でも油断できない“本当に必要な検査と対応”を医師が解説

[2025.11.23]

一般内科医のための

エコーで甲状腺結節が見つかったときの対応フローチャート

 

 

1. 全体像:あわてないための前提知識

 

  • 日本のデータでは、健診などでエコーで見つかる甲状腺結節のうち、癌はおおむね 2.6〜8.3%程度 と報告されています。jsco-cpg.jp

  • 高齢者ではエコーをすると 50%前後で何らかの結節が見つかる とされ、結節=がんでは全くありません。PMC+1

 

👉 まずは
「結節は珍しくない」「多くは良性」「しかし中にごく一部悪性が紛れ込む」
という感覚を持っておくことが重要です。

 

2. 初診時に必ず確認すること

 

2-1. 問診・身体所見でチェック

 

ハイリスク要素(あったら要注意)japanthyroid.jp

  • 小児・若年者(〜20歳台前半)

  • 甲状腺癌の家族歴

  • 小児期の頸部放射線照射歴

  • 短期間での急速増大

  • 嗄声、嚥下困難、呼吸困難、前頸部の圧迫感

  • 触って明らかに硬い/周囲と癒着して動きにくい結節

  • 頸部リンパ節腫大

 

これらがあれば、
サイズが小さくても低い閾値でFNAや専門医紹介を考える方向になります。

 

2-2. 初期検査のセット

 

  1. 採血

    • TSH(必須)

    • 可能なら FT4
      (+ 抗TPO抗体などは状況に応じて)

  2. 頸部超音波(甲状腺+頸部リンパ節)

 

3. TSHでまず「機能性かどうか」を分ける

 

● TSH 低値(subnormal 以下)

 

機能性結節(中毒性結節)疑い

  • シンチ(^123I, ^99mTc)で “hot nodule” かどうか評価を検討。PMC

  • hot nodule は悪性のことが非常に稀なので、通常は FNA 不要とされます。AAFP

  • 甲状腺中毒症状があれば、内服・放射性ヨウ素・手術など治療方針を専門医と相談。

非専門医としては:
TSH低値+結節あり → シンチ検査や専門科紹介を基本方針に。

 

● TSH 正常〜高値

 

非機能性結節として扱い、
「エコー所見+サイズ」で FNA の必要性を判断します。

 

4. 超音波で見るべきポイント(非専門医版)

 

日本超音波医学会の診断基準などをベースに、
重要ポイントだけに絞ると:jsum.or.jp+1

 

4-1. 良性寄りの所見

 

  • ほぼ嚢胞(真っ黒で液体)

  • 内部均一で等〜高エコー

  • 辺縁が平滑・明瞭

  • 単発ではなく多発する「腺腫様結節」風

  • 充実成分が少ない嚢胞性結節

 

4-2. 悪性を疑う所見(特に乳頭癌)

 

  • 形状:縦長(前後径 > 横径)、不整形

  • 内部エコー:低エコーで不均一

  • 境界:不明瞭、ギザギザ

  • 石灰化:微細な高エコー(砂粒状)

  • 被膜外浸潤疑い

  • 異常な頸部リンパ節腫大(球形、門構造消失、石灰化など)

👉 「低エコー+不整形+微細石灰化+縦長」 → 強く悪性を疑う
と覚えておくと実用的です。

 

5. FNA(穿刺吸引細胞診)の適応 ― 実践用ざっくり表

 

日本乳腺甲状腺超音波学会(JABTS)などの基準を、
一般内科医でも使いやすい形にざっくり整理します。J-STAGE+1

※サイズは腫瘍径。
※高リスク臨床背景(家族歴・放射線歴など)があれば、1段階低いサイズでも考慮。

 

パターン 代表的なエコー所見 FNAを考えるサイズの目安
強く悪性を疑う結節 低エコー+形状不整+微細石灰化+縦長 など 5mm超で検討(特に単発・若年者・ハイリスクなら)
異常リンパ節あり 転移疑いリンパ節 サイズに関わらず リンパ節も含めFNA検討
低エコーの充実性結節 低エコーだが「強く悪性」とまでは言えない ≧10mm で FNA検討
等〜高エコーの充実性結節 境界比較的明瞭、腺腫様結節など 10〜15mm以上 で状況により
嚢胞+充実成分混在 充実部分が一部にある 15〜20mm以上 で検討
典型的腺腫様結節 多発結節、等〜高エコー、明瞭境界 20mm超えたら一度はFNA を検討
純粋な嚢胞 ほぼ液体のみ、充実部分なし 通常 FNA不要(穿刺するとしても治療目的の穿刺排液)

 

即紹介レベル(非専門医は無理せず):

  • 上記の「強く悪性」パターン + 頸部リンパ節腫大

  • 明らかな気管・食道圧迫

  • 急速増大

  • 小児・若年者で悪性を疑う結節

  • 濾胞性腫瘍が疑われる(FNAで濾胞性腫瘍/意義不明など)japanthyroid.jp+1

 

6. FNA結果に応じた対応(非専門医が押さえておくライン)

 

日本では Bethesda 分類と類似の細胞診分類が使われますが、
非専門医としては下の3パターンに整理しておくと現場で迷いません。PMC+1

 

6-1. 良性(ベセスダ II 相当)

 

  • 最も多いパターン。

  • 基本は経過観察

フォローの目安:

  • 6〜12か月ごとにエコー。

  • サイズが明らかに増大(例:径で20%以上増加、または2mm以上増加)
     または新たに悪性所見(微細石灰化など)が出たら再FNA or 専門医紹介。AAFP+1

 

6-2. 悪性/悪性疑い(ベセスダ V〜VI)

 

  • 乳頭癌が大多数。

  • 原則 外科紹介(甲状腺外科・内分泌外科)

ただし、
cT1aN0M0(1cm以下、リンパ節転移なし)の低リスク微小乳頭癌 については、
日本のガイドラインでも 積極的経過観察(アクティブサーベイランス)が容認・推奨されています。jaes.umin.jp+1

 

▶ 非専門医としては
「微小癌で経過観察という選択肢もある」ことを説明した上で、
方針決定は必ず専門医に委ねる、というスタンスが安全です。

 

6-3. 意義不明な異型/濾胞性腫瘍疑い(ベセスダ III〜IV)

 

  • FNAだけでは良悪の鑑別がつかないグレーゾーン。

  • 選択肢:

    • 再FNA

    • 分子検査(施設により)

    • 葉切除(診断と治療を兼ねた手術)

 

▶ 非専門医としては
このカテゴリが出たら迷わず甲状腺専門医へ紹介
—— と覚えておけば十分です。PMC+1

 

7. 「この患者さんは自分でフォローしてよいか?」の判断軸

 

日常診療でフォローしやすいケース

 

  • TSH 正常〜軽度高値

  • 典型的良性結節(腺腫様、嚢胞性主体)

  • サイズ ≦ 20mm、悪性所見なし

  • FNA良性、増大傾向なし

  • 症状なし(圧迫・嗄声なし)

1年に1回エコー+TSH 程度で十分なことが多い。

 

すぐ専門医に送った方がよいケース

 

  • 上記ハイリスク問診(放射線歴・家族歴・小児など)

  • 悪性を強く疑うエコー所見

  • 異常リンパ節

  • 急速増大

  • 嗄声、嚥下困難など局所症状

  • TSH低値で機能性結節疑い(シンチ含め検討が必要)

  • FNA で悪性/悪性疑い/濾胞性腫瘍疑い

 

8. 患者さんへの説明のコツ

 

  • 甲状腺のしこりは、エコーをするととてもよく見つかりますが、その多くは良性です。jsco-cpg.jp

  • 今やっている検査は、“がんの可能性がないかを安全に見極めるための手順”です。

  • サイズやエコーの性格で、針を刺して調べる必要があるかどうかを決めています。全員に針生検が必要なわけではありません。ResearchGate+1

  • 良性と分かった結節は、しばらく定期的にエコーで様子を見ればよく、一生問題を起こさないことも多いです。

 

まとめ:非専門医用シンプルアルゴリズム

 

  1. TSH+エコーを全員に

  2. TSH低値 → シンチ or 甲状腺専門医へ

  3. TSH正常〜高値 → エコーで

    • 明らかな良性パターン → サイズと症状で経過観察

    • 怪しい/悪性所見あり → サイズに応じて FNA or 専門医紹介

  4. FNA結果

    • 良性 → 6〜12か月ごとにエコー+増大時再評価

    • 悪性/悪性疑い → 甲状腺外科紹介

    • 意義不明/濾胞性腫瘍疑い → 専門医紹介

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