メニュー

夜間・早朝に咳が止まらない原因は?咳喘息・後鼻漏・逆流性食道炎を内科医が解説

[2025.11.22]

夜間・早朝に咳が止まらない…考えられる原因と受診の目安

 

 

咳喘息・後鼻漏・逆流性食道炎を専門医が解説

 

夜中や明け方になると咳が止まらない、寝ようとすると咳き込んでしまう──。
このような「夜間・早朝に悪化する咳」は、単なる風邪ではなく、咳喘息・後鼻漏・胃酸逆流(逆流性食道炎) などの病気が関わっていることが少なくありません。

夜に咳が出やすい時間帯の特徴や、典型的な原因疾患を知ることは、正しい診断・治療につなげるための重要な手がかりになります。

 

1. なぜ夜間・早朝に咳が悪化しやすいのか

 

夜間や早朝には、体内の生理的な変化や環境要因により、気道が普段より敏感な状態になります。

 

1-1. 自律神経のリズムと気道の変化

 

  • 呼吸や気管支の動きは、活動時に働く 交感神経 と、休息時に働く 副交感神経 からなる 自律神経 によって無意識にコントロールされています。

  • 日中は交感神経が優位で、気管支は拡張し、空気が通りやすい状態です。

  • 夜になると副交感神経が優位となり、気管支はやや収縮して狭くなる傾向があります。

  • 気道が狭くなることで、**わずかな刺激でも咳が出やすくなる(気道過敏性が高まる)**状態になります。

 

1-2. 横になる姿勢(臥位)と環境の影響

 

  • 就寝時に 横になる(臥位) ことで、重力の影響が変わり、

    • 鼻水や後鼻漏、

    • 気道の分泌物、

    • 胃酸・胃内容物
      などが喉や気管支に流れ込みやすくなり、咳受容体を刺激します。

  • 夜間の 冷え込みや空気の乾燥 も気道粘膜を刺激し、咳を悪化させる要因になります。

 

2. 夜間・早朝に多い「咳喘息」

 

咳喘息(せきぜんそく) は、長引く咳(遷延性/慢性咳嗽)の 代表的な原因のひとつ です。

 

2-1. 咳喘息の症状の特徴

 

  • 気管支喘息の一種ですが、

    • 「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった 典型的な喘鳴や強い息苦しさを伴わず

    • 主な症状は 咳のみ で、3週間〜8週間以上続くのが特徴です。

  • 特に、

    • 夜間〜明け方に咳が強くなる

    • 咳で夜中に目が覚める
      といった訴えが多くみられます。

  • 咳は 痰をほとんど伴わない乾いた咳 が中心です。

  • 以下のような刺激で咳発作が誘発されやすくなります。

    • 冷たい空気

    • タバコの煙

    • 香水・線香などの匂い

    • 運動・会話・大きな声

    • 季節や気圧・天候の変化

  • アレルギー体質(アトピー)、アレルギー性鼻炎などを合併している方に多い傾向があります。

 

2-2. 咳喘息の病態と治療

 

  • 咳喘息は、アレルギー性の気道炎症 により、気道が過敏になっている状態です。

  • 炎症により、ほんのわずかな刺激で過剰に咳反射が出てしまいます。

  • 治療は気管支喘息と同様に、

    • 吸入ステロイド薬(ICS) が基本治療となり、

    • 必要に応じて 気管支拡張薬 を併用します。

  • 放置すると、30〜40%前後が典型的な気管支喘息へ移行するとも報告されており、早期の診断と継続的な治療 が重要です。

 

3. 横になると悪化する「後鼻漏(こうびろう)」

 

後鼻漏(こうびろう) は、鼻や副鼻腔でつくられた分泌物(鼻水・膿)が喉の奥に流れ落ちる状態で、
以前は 後鼻漏症候群(postnasal drip syndrome)/上気道咳嗽症候群(UACS) などと呼ばれていました。

 

3-1. 後鼻漏による咳の特徴

 

  • 健常な人でも、少量の鼻水は常に無意識のうちに喉へ流れています。

  • 量が増えたり、粘り気が強くなると、

    • 喉の違和感や不快感

    • 咳や咳払い
      の原因になります。

  • 特徴的なのは、

    • 仰向けに寝ると咳が悪化する

    • 朝方、痰が多い
      といった症状です。

  • 主な自覚症状:

    • 喉の奥に何かがへばりついているような感じ

    • 頻回の咳払い

    • 痰のからむ湿った咳 が多い

  • 一定量の鼻水が痰として出切ると一時的に咳が落ち着く、というパターンを繰り返すこともあります。

 

3-2. 原因疾患と治療

 

後鼻漏の背景には、次のような上気道疾患があります。

  • アレルギー性鼻炎

  • 副鼻腔炎(蓄膿症)

  • かぜ・慢性上気道炎 など

 

治療としては、

  • アレルギーを抑える薬(抗ヒスタミン薬など)

  • マクロライド系抗菌薬(慢性副鼻腔炎に対して)

  • 去痰薬 などを組み合わせて行います。

 

鼻・副鼻腔の問題が中心となるため、耳鼻咽喉科での評価・治療が重要です。
セルフケアとしては、

  • 就寝時に頭側を少し高くして寝る

  • 加湿器やマスクで乾燥を防ぐ

  • 必要に応じて鼻うがい を取り入れる

といった対策が有効です。

 

4. 食後や横になると咳が出る「胃酸逆流(逆流性食道炎)」

 

胃食道逆流症(GERD) は、胃酸や胃内容物が食道へ逆流することで、胸やけや咳など様々な症状を引き起こす病気です。
近年、長引く咳の原因 としても注目されており、特に 夜間の咳・横になると出る咳 との関連が深いとされています。

 

4-1. 胃酸逆流による咳の特徴

 

  • 胃酸が食道や喉を刺激することで、咳反射が起こります。

  • 特徴的なのは、

    • 食後

    • 横になったとき(就寝時)
      に咳が出やすい、悪化しやすいことです。

  • よく見られる自覚症状:

    • 胸やけ

    • 酸っぱい液が上がってくる感じ(呑酸)

    • 喉のイガイガ感・異物感

    • 声がかすれる など

  • 咳は 痰を伴わない乾いた咳 であることが多く、「風邪が治っても咳だけ残る」と訴える方も少なくありません。

 

4-2. 胃酸逆流と咳の悪循環

 

胃酸逆流が咳を引き起こすメカニズムには、いくつかの説があります。

  • 反射説
    逆流した胃酸が食道末端の迷走神経を刺激し、その刺激が反射的に気道側へ伝わって咳が出る。

  • 逆流/誤嚥説
    胃酸や胃内容物が食道からさらに上まで到達し、喉頭・気管に微量誤嚥することで、粘膜を直接刺激し咳が出る。

  • 咳―逆流の自己増悪サイクル
    咳き込む → 腹圧が上がる → 胃が圧迫され逆流が増える → 刺激でさらに咳が出る
    という悪循環に陥るケースもあります。

 

4-3. 診断と治療・生活習慣の見直し

 

  • 診断は、

    • 詳しい問診(咳の時間帯・食事との関係・胸やけの有無など)

    • 胃カメラで食道粘膜の炎症を確認(逆流性食道炎の有無)

    • 胃酸を抑える薬(PPIなど)を試してみて症状が改善するか どうか
      などを総合的に評価して行われます。

  • 治療は、

    • プロトンポンプ阻害薬(PPI)

    • H2ブロッカー
      など、胃酸分泌を抑える薬が中心です。

  • 併せて、以下のような生活習慣の改善が非常に重要です。

    • 就寝前 2〜3時間は飲食を控える

    • 食後すぐに横にならない

    • ベッドの 頭側を高くして寝る(頭位挙上)

    • 脂っこい食事・過食・アルコール・刺激物(香辛料など)を控える

    • 体重管理(肥満は逆流を悪化させます)

 

5. 長引く夜間の咳で受診すべきタイミング

 

5-1. 自己判断で放置しない方がよい咳

 

次のような場合は、早めの医療機関受診をおすすめします。

 

  • 咳が 2週間以上続く、特に 8週間以上続く 場合

  • 夜間・早朝の咳で睡眠が妨げられている

  • 息苦しさや胸の痛み、体重減少、血痰などを伴う

  • 「咳喘息」「アレルギー」「逆流性食道炎」を指摘されたことがある

  • 市販薬や風邪薬を飲んでも改善しない

 

長引く咳の背景には、今回ご紹介した 咳喘息・後鼻漏・胃食道逆流症複合的に関与していることが多く、どれか一つだけを治療しても十分に改善しないケースも少なくありません。

 

5-2. どの診療科を受診すべき?

 

症状や背景によって、以下の診療科での評価が必要になります。

 

  • 主に咳・喘鳴・息苦しさが前景
    呼吸器内科・一般内科

  • 鼻水・鼻づまり・後鼻漏が強い
    耳鼻咽喉科

  • 胸やけ・呑酸・胃もたれ・腹部症状を伴う
    消化器内科

 

きだ内科クリニックでは、問診・聴診に加え、必要に応じて以下の検査を組み合わせ、原因を丁寧に評価します。

  • 血液検査・レントゲン検査

  • 呼気NO検査(気道炎症の評価)

  • 胃カメラ・食道胃内視鏡検査 など

 

まとめ:夜間・早朝に咳が続くときは一度ご相談ください

 

夜間や早朝に悪化する咳は、
「咳喘息」・「後鼻漏」・「胃酸逆流(逆流性食道炎)」 などが絡み合って起きていることが多く、
放置すると 睡眠の質の低下、気管支喘息への移行、生活の質の低下 につながります。

「夜だけだから様子をみよう」と自己判断せず、
お困りの症状が続く場合は、ぜひ一度、きだ内科クリニックへご相談ください。
原因をしっかり見極め、咳を根本からコントロールする治療 を一緒に考えていきましょう。

 

ご予約はこちら

HOME

ブログカレンダー

2025年12月
« 11月    
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  
▲ ページのトップに戻る

Close

HOME

chatsimple