メニュー

自律神経の乱れと脳腸相関とは?ストレス性胃腸炎・IBSの最新研究と改善法を専門医が解説【きだ内科クリニック】

[2025.11.19]

🧠 自律神経と脳腸相関|ストレス性消化器疾患の最新研究と治し方を専門医が徹底解説

 

 

はじめに:ストレス社会で急増する“機能性消化管疾患”

 

現代社会では、過剰なストレスにより 自律神経の乱れ → 消化管のトラブル が急増しています。
ストレスはうつ病・心血管疾患だけでなく、胃腸障害を引き起こす主要因です。

器質的異常がないのに消化器症状が続く疾患を 機能性消化管障害(FGIDs) と呼び、その代表が

 

  • 過敏性腸症候群(IBS)

  • 機能性ディスペプシア(FD)

です。

IBSは世界人口の約10%、日本では 7人に1人 が抱える“国民病”。
強い腹痛・下痢・便秘・膨満感でQOLを大きく低下させるため、今や対策は急務です。

 

🔗 自律神経 × 脳腸相関:ストレスで胃腸が壊れる科学的メカニズム

脳と腸は、

  • 自律神経系

  • ホルモン系

  • 免疫系
    を介して絶えず双方向に情報交換を行っており、この仕組みが 脳腸相関(Brain–Gut Axis) です。

 

1. 自律神経の乱れが胃腸症状を引き起こす

 

胃腸は、意識では操作できない 自律神経(交感神経・副交感神経) により24時間コントロールされています。

しかし、

  • ストレス

  • 睡眠不足

  • 過労

などで交感神経が過剰に働くと、副交感神経が抑制され…

✔ 胃腸の血流が低下

✔ 粘膜の防御力が弱る
✔ ぜん動運動が過敏または鈍化
✔ 便秘・下痢・胃痛が悪化

という症状が発生します。

 

2. ストレスホルモン(CRH)の過剰反応

 

ストレス時、脳は CRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン) を放出し、
HPA軸(視床下部-下垂体-副腎系)が活性化。

CRHは以下を誘発:

  • 内臓知覚過敏

  • 腸の過敏な収縮

  • 大腸運動の過活動

IBS患者は、CRHに対する腸の反応が 健常者より強く、誤った適応 をしていることが判明しています。

 

🧬 最新研究でわかった“ストレスで腸が壊れる”真の理由

 

IBSやFDの病態は複雑で、

  • 内臓知覚過敏

  • 腸内細菌叢の乱れ

  • 微小炎症

  • 脳神経の過敏化

などが絡み合っています。

 

1. 中枢神経の「感作」による内臓知覚過敏

 

IBSの特徴は 弱い刺激でも痛みとして感じること

ストレス下では、

  • 扁桃体

  • 前帯状回

  • 島皮質(insula)

など“痛みと恐怖”を司る領域が過剰に反応。
IBS患者では CRH投与だけで扁桃体が賦活化 されるという異常な反応性が確認されています。

 

2. 腸内細菌叢の異常と“αディフェンシン”の低下

 

最新研究で判明:

✔ 心理ストレス → パネト細胞からの αディフェンシン分泌が低下

→ 腸内細菌叢のバランスが崩れ、
→ 腸の炎症・症状悪化へ直結

✔ NLRP3インフラマソームの活性化

慢性ストレスにより

  • 腸のグリア細胞

  • 白血球
    が炎症性サイトカイン(TNFなど)を産生し、腸の炎症が悪化。

IBSが単なる“気のせい”ではなく
明確な炎症性疾患であることが示されています。

 

🩺 ストレス性消化器疾患の治療・対処法【最新】

 

IBS・FDの治療は以下の“多角的アプローチ”が効果的。

 

1. 生活習慣・食事改善(最も重要)

 

● 食事

  • 脂っこい料理

  • 香辛料

  • カフェイン

  • アルコール

  • 炭酸飲料

など刺激物は悪化因子。

 

● 低FODMAP食

発酵しやすい糖質を制限 → ガス・腹痛の改善に有効
(ただし体質差あり)

 

● 腸内環境改善

  • 乳酸菌

  • ビフィズス菌

  • 食物繊維

  • 発酵食品

腸で90%作られる セロトニン を整えることは、自律神経改善にも直結。

 

2. 薬物療法

 

  • 消化管運動調節薬(トリメブチン)

  • 便秘型:ルビプロストン・リナクロチド

  • 下痢型:5-HT3拮抗薬

  • 漢方(六君子湯・半夏瀉心湯・大建中湯)

  • トラニラスト:NLRP3インフラマソーム抑制

  • DOP受容体作動薬:島皮質の過剰反応を抑える“脳への治療”

  • FMT(便移植):腸内細菌を根本改善する次世代治療

 

3. 心理療法(脳へのアプローチ)

 

IBSは典型的な 脳–腸–心の病気

● 推奨される心理療法

  • 認知行動療法(CBT)

  • マインドフルネス

  • ストレスマネジメント

  • 催眠療法

特に、
・症状 → 不安 → 症状悪化
という悪循環を断ち切るのに効果的。

 

🧠 まとめ:自律神経 × 脳腸相関を理解することが「根本治療」への第一歩

 

  • IBSやFDは「気のせい」ではなく、科学的根拠のある“脳腸の病気”

  • 自律神経・腸内細菌・ホルモン・脳神経が複雑に関与

  • 最新研究に基づく多角的アプローチを行えば、確実に改善可能

ストレスで悪化する胃腸症状に悩んでいる方は、
「脳と腸の両方を整える」 という視点が最も効果的な治療戦略です。

 

執筆・監修:山形県米沢市 きだ内科クリニック 院長 木田 雅文
(医学博士/日本消化器病学会 消化器病専門医/日本消化器内視鏡学会 専門医)

ご予約はこちら

HOME

ブログカレンダー

2025年12月
« 11月    
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  
▲ ページのトップに戻る

Close

HOME

chatsimple