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痩せているのに脂肪肝?「隠れ脂肪肝(Lean MASLD)」の正体と危険性を最新研究で徹底解説【きだ内科クリニック】

[2025.11.18]

【専門医が警告】「隠れ脂肪肝」が急増中!痩せていても発症する「Lean NAFLD/Lean MASLD」の正体とは?

 

 

近年、健康診断で 「痩せているのに脂肪肝です」 と指摘されるケースが急増しています。
これは 「隠れ脂肪肝(Lean NAFLD/Lean MASLD)」 と呼ばれる新しい病態で、特に アジア人で多く、日本でも深刻な問題 になりつつあります。

従来の「脂肪肝=太った人の病気」という常識はすでに崩壊。
痩せていても発症する Lean MASLD は、むしろ重症化しやすい危険なタイプであり、正しい理解が必要です。

 

1. 脂肪肝の名称変更と「隠れ脂肪肝」の本当の意味

 

■ NAFLD → MASLD へ名称変更

 

これまで、飲酒以外で起こる脂肪肝は NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患) と呼ばれてきました。

しかし

  • “脂肪性”“非アルコール性”という言葉は患者に誤解や偏見を与える

  • 肝臓ではなく「代謝異常」が病気の本質

という国際的議論を経て、2023年に名称が変更されました。

現在の正式名称は:

  • MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)

  • 重症型は MASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎) ※旧NASH

 

■ Lean MASLD(痩せ型脂肪肝)とは?

 

Lean MASLD とは、

  • BMIが正常(日本人は23未満)にも関わらず

  • 脂肪肝と代謝異常を持つ状態

を指します。

日本では MASLD患者の約20%が非肥満者
さらに、「2040年に日本人の半数が脂肪肝になる」という衝撃的データも報告されています。

 

2. 痩せているのに発症する理由(病態生理)

 

Lean MASLDの原因は、BMIでは説明できない「体の内側の代謝異常」にあります。

 

① 内臓脂肪の蓄積(隠れ肥満)

 

見た目は痩せていても、
内臓脂肪だけ多い“隠れ肥満” が頻繁に見られます。

内臓脂肪は悪玉ホルモン(炎症性サイトカイン)を放出し、
肝臓に流れ込むことで炎症・酸化ストレスを引き起こします。

 

② インスリン抵抗性(代謝異常)

 

Lean MASLDの核心ともいえる要因。

  • 肝臓に脂肪が溜まりやすくなる

  • 脂肪組織から遊離脂肪酸が大量流入

  • 肝炎(MASH)や線維化の進行

痩せていても糖尿病予備軍タイプの代謝異常が潜んでいるケースが多いです。

 

③ サルコペニア(筋肉不足)

 

筋肉が少ないと基礎代謝が低下し、
脂肪が肝臓に蓄積しやすくなります。

Lean MASLDでは サルコペニアが独立した危険因子

 

④ 遺伝的体質(日本人に多い)

 

特に注目される遺伝子:

  • PNPLA3変異(日本人の約30%)

  • TM6SF2変異

これらを持つ人は、痩せていても脂肪肝になりやすい “体質” があります。

 

⑤ 不適切な食習慣

 

  • 夜食が多い

  • 菓子パン・麺類中心

  • タンパク質不足

  • 急激なダイエット

  • 極端な糖質制限による低栄養性脂肪肝

痩せていても脂肪肝が悪化する典型的パターンです。

 

3. 痩せ型脂肪肝は“重症化しやすい”という事実

 

「痩せているから大丈夫」は非常に危険です。

Lean MASLDは、肥満型よりも 進行しやすい ことが明らかになっています。

 

■ MASH(脂肪肝炎)へ進行しやすい

 

炎症 → 線維化 → 肝硬変 → 肝がん
と進むスピードが速い傾向があります。

 

■ 死亡率・心血管疾患リスクも高い

 

Lean MASLDは:

  • 全死亡率 ↑

  • 心筋梗塞・脳卒中リスク ↑

  • 肝臓がんリスク ↑

肥満型と同等、もしくはそれ以上になることも。

 

■ 他臓器がんのリスクも上昇

 

大腸がん、膵臓がん、子宮がんなど
肝臓以外のがんリスクも増加 することが報告されています。

 

4. 診断と治療のポイント

 

■ BMIだけでは絶対に見抜けない

 

血液検査(AST/ALT)が正常でも、脂肪肝は隠れていることがあります。

必要な検査

  • 腹部エコー(脂肪肝チェック)

  • 肝硬度測定(VCTE)

  • MRエラストグラフィ(MRE)

  • FIB-4インデックス(線維化のスクリーニング)

 

5. 痩せ型脂肪肝の治療:体重を減らさず改善する

 

Lean MASLDは 体重を減らすと悪化する危険性 があるため、治療戦略が重要です。

 

■ 基本は「内臓脂肪の減少」と「体組成改善」

 

  • タンパク質を増やす

  • 果糖・砂糖を控える

  • 夜食・加工食品を避ける

  • 有酸素運動+筋トレ

  • 生活習慣の最適化

 

■ 薬物療法(併存疾患から攻める)

 

MASLD改善に寄与する薬

  • GLP-1受容体作動薬

  • SGLT2阻害薬
    (※MASH治療薬としての保険適用はなし)

 

🔚 結論:Lean MASLDは「痩せている人ほど危険」な新しい国民病

Lean MASLDは、BMIでは評価できない“代謝の病気”。
痩せている=健康、ではありません。

健康診断で肝機能異常を指摘されたら、
体重ではなく“代謝の状態”を疑うことが重要。

早期診断・生活改善・正しい運動と食事で、
肝硬変や肝がんへの進行を確実に防ぐことができます。

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