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胆石がないのに右上腹部が痛い理由|機能性胆道障害(SOD・胆嚢ジスキネジア)の最新診断と治療【Rome IV準拠】

[2025.11.24]

胆石がない右上腹部痛:「機能性胆道障害(FDDS)」の最新診断と治療

 

 

胆石も炎症も見つからないのに、右上腹部がズキズキ痛む・背中まで響く・繰り返す
その背景にある代表的な疾患が、

 

👉 機能性胆道障害(Functional Biliary Disorders)
 ・機能性胆嚢障害(胆嚢ジスキネジア)
 ・Oddi括約筋機能不全(SOD)

です。

これは器質的異常が見つからない機能性疾患で、Rome IV診断基準の整備によって治療戦略が大きく変化しています。

 

I. 機能性胆道障害とは?|特徴と分類

 

■ 定義

 

器質的異常(胆石・腫瘍・炎症など)がないにもかかわらず、
胆道痛と同様の強い腹痛を反復する病態

国際的には**Rome IV(機能性消化管障害の国際基準)**で定義されています。

 

■ 2つの代表的病態

 

① 機能性胆嚢障害(Functional Gallbladder Disorder)

  • 胆石なし

  • 胆嚢の収縮能(GBEF)が低下

  • 以前の名称:胆嚢ジスキネジア、慢性無石胆嚢炎

 

② Oddi括約筋機能不全(SOD)

  • 胆汁・膵液の出口の括約筋が十分開かず腹痛を起こす

  • 胆道内圧が上昇し痛みが悪化

  • 女性は男性の約3倍

  • 胆嚢摘出後患者の**10〜20%**で持続痛(胆嚢摘出後症候群)として問題化

 

II. 症状:Rome IVで定義される「胆道痛」

 

Rome IVでは、次のすべてを満たす痛みを「胆道痛」と定義します。

 

✔ 30分以上続く

✔ 不定期に繰り返す

✔ 日常生活を中断するほど強い

✔ 排便・体位変換・制酸薬で軽減しない

 

支持所見

  • 吐き気や嘔吐を伴う

  • 背中・右肩甲骨下に放散

  • 夜間痛で睡眠が妨げられる

典型例は、中年女性の発作性の激しい心窩部痛・右上腹部痛です。

 

III. 診断:器質的疾患の除外と機能評価が鍵

 

機能性胆道障害の診断は、

  1. 器質的疾患を徹底的に除外

  2. 機能的異常を評価

という2段階で行います。

 

1. 除外すべき疾患と画像検査

 

重要な鑑別疾患

 

  • 胆石症・胆管結石

  • 胆管炎

  • 急性膵炎

  • 肝腫瘍

  • 消化性潰瘍穿孔

 

推奨検査

■ 腹部超音波
■ CT
■ MRCP(胆管膵管の非侵襲的画像評価)
■ EUS(微小結石・胆泥の検出に最優秀)

 

とくにEUS(超音波内視鏡)は、
通常エコーでは見逃す胆泥症・微小結石
の発見に非常に有用で、診断精度を大きく高めます。

 

2. Rome IVに基づくSOD分類

 

Rome IV分類 特徴
機能性胆嚢障害 胆石なし+GBEF低下
機能性胆道Oddi括約筋疾患(旧Type II) 胆石なし+肝酵素↑または総胆管拡張のいずれか1つを満たす
機能性胆道痛(旧Type III) 胆石なし+客観的異常なし(肝酵素・膵酵素・胆管径すべて正常)

 

3. 機能的評価

 

■ 胆道シンチグラフィー(HIDA・CCK-CS)

 

  • GBEF(胆嚢駆出率)を測定

  • 40%未満は胆嚢機能障害を示唆

  • ただし非特異的 → 症状との整合性が必須

 

■ 乳頭括約筋内圧測定(SOM)

 

  • SODのかつてのゴールドスタンダード

  • 侵襲性高く、**ERCP後膵炎25%**で現在は慎重適応

  • 基礎圧40mmHg以上で異常

SOMを回避する目的で、DMM(ダブルマイクロトランスデューサー)法の有用性も近年報告されています。

 

IV. 最新の治療戦略:Rome IVで大きく変化

 

治療の目的は、

✔ 痛みの軽減

✔ 胆汁・膵液排出の改善

 

1. 内視鏡的治療(EST)

 

● 適応あり

機能性胆道Oddi括約筋疾患(旧Type I/II)

  • Type I:EST効果が非常に高く推奨

  • Type II:SOMで内圧亢進があれば有効

 

● 適応なし(重要)

機能性胆道痛(旧Type III)

  • EPISOD試験で効果なし
    ESTは推奨されない(Rome IVでカテゴリ削除)

 

2. 機能性胆嚢障害(胆嚢ジスキネジア)

 

推奨治療は:

腹腔鏡下胆嚢摘出術(LC)

 

適応例

  • 典型的な胆道痛

  • GBEF低下(40%未満)

症状改善率は高いものの、
「機能性疾患である」という特性から、外科適応は慎重判断が必要です。

 

3. 薬物療法・保存的治療

 

薬物効果は限定的だが、以下が試されます。

 

■ Oddi括約筋弛緩薬

  • ニフェジピン(Ca拮抗薬)

  • 硝酸薬(ニトログリセリン)

特にType II SODで有効性を示す報告あり。

 

■ その他

  • トリメブチン(運動調節薬)

  • PDE阻害薬(バルデナフィル)

 

■ 食事療法

  • 低脂肪食

  • 非オピオイド鎮痛薬

  • 心身症的要因にも配慮(抗うつ薬の併用など)

 

まとめ:胆石なし右上腹部痛は“診断のパズル”を慎重に組み立てる必要がある

 

右上腹部痛で胆石がない場合、
**機能性胆道障害(胆嚢ジスキネジア・SOD)**が強く疑われます。

 

■ 診断の要点

  • EUS・MRCPで器質的疾患を徹底除外

  • 胆道シンチでGBEF評価

  • SOMは慎重に選択

 

■ 治療の要点

  • Type I/II SOD → EST有効

  • 機能性胆道痛(旧Type III)→ EST禁忌/保存療法

  • 胆嚢ジスキネジア → 適切症例でLCが有効

 

機能性胆道障害は、
まさに**「症状・画像・機能評価のピースを集めて正解にたどり着く」**疾患です。
心身相関も関与するため、多角的アプローチによる疼痛管理が重要です。

 

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