何を食べても太る原因は“リポタイプ”だった|最新の肥満分類と体質別ダイエット治療を医師が徹底解説
何を食べても太る…原因は“リポタイプ(脂肪タイプ)”にあった
最新の肥満分類とリポタイプ別の効果的な治療戦略
ご提示いただいたテーマ「何を食べても太る…『リポタイプ別肥満治療』」について、肥満のメカニズムから最新治療の方向性、そして体質(リポタイプ)に応じた最適なアプローチまで、最新エビデンスをもとにわかりやすく解説します。
1. 肥満と肥満症の定義:医学的な“治療が必要な肥満”とは?
肥満とは、体脂肪が過剰に蓄積した状態(BMI 25以上) を指します。しかし、治療を必要とする医学的な“肥満症”とは明確に異なります。
■ 肥満症とは
肥満に起因または関連する11種類の健康障害を合併、または合併が強く予測される状態 を指し、積極的な治療(食事・運動・薬物・場合により手術)が必要とされます。
特に、
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内臓脂肪型肥満(内臓脂肪面積100cm²以上)
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腹囲:男性85cm以上、女性90cm以上
は、健康障害の有無に関わらず“肥満症”と診断されます。
2. 何を食べても太る…肥満の背景にある“体質(リポタイプ)”
肥満は「食べすぎ・運動不足だけが原因ではない」ことが近年の研究で明確になっています。
■ 遺伝・体質は肥満の 40〜70% を占める
特に以下の体質異常が「太りやすさ」と深く結びついています。
① 熱産生の弱さ(代謝が低い)
脂肪細胞の熱産生に重要な UCP-1(脱共役タンパク質) の遺伝子異常により、
余剰エネルギーを熱として消費しにくい体質の人がいます。
② 食欲調節ホルモン(レプチン)の効きが悪い
脂肪細胞から分泌される レプチン は食欲を抑えるホルモンですが、
肥満者ではレプチンが効かない レプチン抵抗性 が起こりやすく、
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食欲が止まらない
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過食が続く
など「意思では抑えられない食欲」が発生します。
3. 最新の“リポタイプ別”肥満分類
遺伝子・代謝・脂肪細胞の働きから、太りやすさのタイプを分類する概念が「リポタイプ」です。
A. 遺伝子・代謝特性でみるリポタイプ
| 遺伝子多型 | 特徴・代謝タイプ | 太りやすさの理由 | 有効な対策 |
|---|---|---|---|
| β3アドレナリン受容体遺伝子多型 | 糖質代謝が苦手 | 熱産生が弱く脂肪が燃えにくい(日本人の約30%) | 糖質コントロールと運動の強化 |
| UCP-1遺伝子多型 | 脂質代謝が苦手 | 脂肪燃焼のスイッチが入りにくい | 脂質控えめ・筋トレで代謝UP |
| β2アドレナリン受容体遺伝子多型 | タンパク質代謝が得意 | 痩せやすい体質に関与 | 高タンパク食と筋トレが効果的 |
| FTO遺伝子(肥満関連遺伝子) | 高BMIと関連 | 食欲増加や代謝低下を促す | 食事記録・行動療法が重要 |
B. 脂肪細胞のタイプでみるリポタイプ
脂肪細胞には2種類あります:
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白色脂肪細胞:エネルギーを蓄える(=太りやすい)
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褐色/ベージュ脂肪細胞:脂肪を燃やして熱を作る(=痩せやすい)
■ ベージュ脂肪細胞が多いと痩せ体質
褐色化(ベージュ化)は「エネルギー消費をあげて痩せる治療」の新戦略として注目されています。
C. 体型でみるリポタイプ
(医学的根拠は遺伝子検査より弱いが、有用な傾向)
| タイプ | 特徴 | 太り方 | 弱点 |
|---|---|---|---|
| リンゴ型 | お腹中心 | 内臓脂肪型 | 糖質代謝が弱い |
| 洋ナシ型 | 下半身太り | 皮下脂肪型 | 脂質代謝が弱い |
| バナナ型 | 筋肉が少ない | 痩せ型でも太りやすい | タンパク質吸収が弱い |
4. リポタイプ別・肥満症治療の最適解
肥満治療の目的は 体重を減らすことではなく「健康リスクを減らすこと」 です。
① 生活習慣改善療法
肥満症治療の基本は「食事・運動・行動療法」の三本柱。
● 食事療法
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目標は 3〜6か月で体重の 3〜10%減量
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炭水化物50〜65%・タンパク質13〜20%・脂質20〜30%が推奨
(肥満症診療ガイドライン2022)
リポタイプ別:食事のコツ
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リンゴ型:糖質の質と量に注意(ベジファースト)
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洋ナシ型:脂質の量と種類を調整(蒸す・茹でる)
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バナナ型:高タンパク・筋トレで基礎代謝UP
● 運動療法
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有酸素運動(ウォーキング)+筋トレ
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サルコペニア予防にはレジスタンス運動を必ず追加
● 行動療法
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食事記録(セルフモニタリング)
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認知行動療法
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ストレス対処法
5. 最新の薬物療法(保険適用)
生活習慣改善で十分な効果が出ないときに選択します。
| 製品名 | 種類 | 特徴 |
|---|---|---|
| ウゴービ(セマグルチド) | GLP-1受容体作動薬 | 強力な食欲抑制・体重減少(2024年発売) |
| ゼップバウンド(チルゼパチド) | GIP/GLP-1共作動 | 日本で2025年発売。ウゴービを上回る効果の報告も |
| サノレックス | 食欲抑制薬 | BMI35以上の高度肥満 |
| アライ(オルリスタット) | 脂質吸収阻害薬 | OTC(市販)で内臓脂肪に効果 |
※痩身目的の不適切使用が問題化 → 医学的適応の患者のみ使用すべき。
6. 外科療法(減量手術)
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対象:生活習慣+薬物療法で効果が十分でない 高度肥満症
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日本では 腹腔鏡下スリーブ状胃切除術 が保険適応
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糖尿病寛解など“代謝改善効果”も高い
7. リバウンドする体・治らない肥満の正体
「痩せてもすぐ太る」「何をしても痩せない」には科学的理由があります。
■ リバウンドの原因
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免疫記憶(肥満メモリー)
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腸内細菌の変化
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筋肉量低下(基礎代謝低下)
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ホルモン異常(レプチン↓、グレリン↑)
肥満は“意志の問題”ではなく、医学的介入が必要な慢性疾患です。
