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何を食べても太る原因は“リポタイプ”だった|最新の肥満分類と体質別ダイエット治療を医師が徹底解説

[2025.11.23]

何を食べても太る…原因は“リポタイプ(脂肪タイプ)”にあった

 

 

最新の肥満分類とリポタイプ別の効果的な治療戦略

 

ご提示いただいたテーマ「何を食べても太る…『リポタイプ別肥満治療』」について、肥満のメカニズムから最新治療の方向性、そして体質(リポタイプ)に応じた最適なアプローチまで、最新エビデンスをもとにわかりやすく解説します。

 

1. 肥満と肥満症の定義:医学的な“治療が必要な肥満”とは?

 

肥満とは、体脂肪が過剰に蓄積した状態(BMI 25以上) を指します。しかし、治療を必要とする医学的な“肥満症”とは明確に異なります。

 

■ 肥満症とは

 

肥満に起因または関連する11種類の健康障害を合併、または合併が強く予測される状態 を指し、積極的な治療(食事・運動・薬物・場合により手術)が必要とされます。

特に、

  • 内臓脂肪型肥満(内臓脂肪面積100cm²以上)

  • 腹囲:男性85cm以上、女性90cm以上

は、健康障害の有無に関わらず“肥満症”と診断されます。

 

2. 何を食べても太る…肥満の背景にある“体質(リポタイプ)”

 

肥満は「食べすぎ・運動不足だけが原因ではない」ことが近年の研究で明確になっています。

 

■ 遺伝・体質は肥満の 40〜70% を占める

 

特に以下の体質異常が「太りやすさ」と深く結びついています。

① 熱産生の弱さ(代謝が低い)

脂肪細胞の熱産生に重要な UCP-1(脱共役タンパク質) の遺伝子異常により、
余剰エネルギーを熱として消費しにくい体質の人がいます。

② 食欲調節ホルモン(レプチン)の効きが悪い

脂肪細胞から分泌される レプチン は食欲を抑えるホルモンですが、
肥満者ではレプチンが効かない レプチン抵抗性 が起こりやすく、

  • 食欲が止まらない

  • 過食が続く

など「意思では抑えられない食欲」が発生します。

 

3. 最新の“リポタイプ別”肥満分類

 

遺伝子・代謝・脂肪細胞の働きから、太りやすさのタイプを分類する概念が「リポタイプ」です。

 

A. 遺伝子・代謝特性でみるリポタイプ

 

遺伝子多型 特徴・代謝タイプ 太りやすさの理由 有効な対策
β3アドレナリン受容体遺伝子多型 糖質代謝が苦手 熱産生が弱く脂肪が燃えにくい(日本人の約30%) 糖質コントロールと運動の強化
UCP-1遺伝子多型 脂質代謝が苦手 脂肪燃焼のスイッチが入りにくい 脂質控えめ・筋トレで代謝UP
β2アドレナリン受容体遺伝子多型 タンパク質代謝が得意 痩せやすい体質に関与 高タンパク食と筋トレが効果的
FTO遺伝子(肥満関連遺伝子) 高BMIと関連 食欲増加や代謝低下を促す 食事記録・行動療法が重要

 

B. 脂肪細胞のタイプでみるリポタイプ

 

脂肪細胞には2種類あります:

  • 白色脂肪細胞:エネルギーを蓄える(=太りやすい)

  • 褐色/ベージュ脂肪細胞:脂肪を燃やして熱を作る(=痩せやすい)

■ ベージュ脂肪細胞が多いと痩せ体質

褐色化(ベージュ化)は「エネルギー消費をあげて痩せる治療」の新戦略として注目されています。

 

C. 体型でみるリポタイプ

 

(医学的根拠は遺伝子検査より弱いが、有用な傾向)

タイプ 特徴 太り方 弱点
リンゴ型 お腹中心 内臓脂肪型 糖質代謝が弱い
洋ナシ型 下半身太り 皮下脂肪型 脂質代謝が弱い
バナナ型 筋肉が少ない 痩せ型でも太りやすい タンパク質吸収が弱い

 

4. リポタイプ別・肥満症治療の最適解

 

肥満治療の目的は 体重を減らすことではなく「健康リスクを減らすこと」 です。

 

① 生活習慣改善療法

 

肥満症治療の基本は「食事・運動・行動療法」の三本柱。

 

● 食事療法

  • 目標は 3〜6か月で体重の 3〜10%減量

  • 炭水化物50〜65%・タンパク質13〜20%・脂質20〜30%が推奨
    (肥満症診療ガイドライン2022)

リポタイプ別:食事のコツ

  • リンゴ型:糖質の質と量に注意(ベジファースト)

  • 洋ナシ型:脂質の量と種類を調整(蒸す・茹でる)

  • バナナ型:高タンパク・筋トレで基礎代謝UP

 

● 運動療法

  • 有酸素運動(ウォーキング)+筋トレ

  • サルコペニア予防にはレジスタンス運動を必ず追加

 

● 行動療法

  • 食事記録(セルフモニタリング)

  • 認知行動療法

  • ストレス対処法

 

5. 最新の薬物療法(保険適用)

 

生活習慣改善で十分な効果が出ないときに選択します。

製品名 種類 特徴
ウゴービ(セマグルチド) GLP-1受容体作動薬 強力な食欲抑制・体重減少(2024年発売)
ゼップバウンド(チルゼパチド) GIP/GLP-1共作動 日本で2025年発売。ウゴービを上回る効果の報告も
サノレックス 食欲抑制薬 BMI35以上の高度肥満
アライ(オルリスタット) 脂質吸収阻害薬 OTC(市販)で内臓脂肪に効果

※痩身目的の不適切使用が問題化 → 医学的適応の患者のみ使用すべき。

 

6. 外科療法(減量手術)

 

  • 対象:生活習慣+薬物療法で効果が十分でない 高度肥満症

  • 日本では 腹腔鏡下スリーブ状胃切除術 が保険適応

  • 糖尿病寛解など“代謝改善効果”も高い

 

7. リバウンドする体・治らない肥満の正体

 

「痩せてもすぐ太る」「何をしても痩せない」には科学的理由があります。

 

■ リバウンドの原因

  1. 免疫記憶(肥満メモリー)

  2. 腸内細菌の変化

  3. 筋肉量低下(基礎代謝低下)

  4. ホルモン異常(レプチン↓、グレリン↑)

肥満は“意志の問題”ではなく、医学的介入が必要な慢性疾患です。

 

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